茅葺研修に行ってとても強く感じた事があります

 

 

茅葺職人って特殊な仕事なんでしょうか?

五箇山では茅葺は特殊な仕事ではないんですきっと。もちろん補助金はあるんでしょうが、会話の端々から茅葺が生活に根付いているのが伺えます。現に私たちが研修でお世話になった職人さん達はなんと!森林組合の職員さんです。雨などで茅葺の仕事が出来ない時は組合の仕事したり山師をしたりするんだそうです。

 

作業時は普通にお昼ご飯を食べ(当たり前か)10時と15時に一服し、

 

先にあの作業やろう、ここはこうしよう、材料上げてくれ~ってコミュニケーションとりながら作業し、、、、、

 

夕方作業終了。

 

作業形態としてはいたって普通。

むしろ私達と同じで驚いたんです。

 

五箇山では、人数こそ少ないものの茅葺職人は「特殊な仕事」ではないんだと感じました。

 

では、全国的に見た茅葺職人って?

そりゃ、もちろん特殊な職業でしょう。そもそも茅葺の家がない。建築基準法により市街地ではまず茅葺は不可能で、維持保全に莫大な金額がかかる。現代にあっている工法とはとても思えません。しかし文化として残していく意義は大きいんじゃないでしょうか。昔は「結」により伝わってきた茅葺屋根の文化。文化財などとして、また日本独特の原風景として残さなくてはいけないと思います。

 

しかし、しかしです。伝統的な茅葺屋根を残せばよいのでしょうか?それも確かに大事です。でももっと重要なのは元来伝わってきた「結による」茅葺ではないのでしょうか?地域の人たちが関わりあい、一つの目的に向かい作業をする。茅葺は特殊ではないんです。だって、地域の材料でその地域の人たちが「結」でやっていたんですもの。

 

しかし今、「結」は田舎からもなくなろうとしています。

 

お互いを助け合い、共に生きていく。「結」

 

んで、茅葺職人って、全国的にみたら、、、、、

 

やっぱり特殊です。今は特殊な職業と言えるでしょう。(少し前までみんなでやっていたのに)

 

 

で、考えました。大工って???

今はまだ特殊な職業ではないでしょう。が、分業化はますます進み「大工は木工事のみ」はまだ良い方、「ボード張り」が主な仕事というパターンは主流となりつつあります。

 

木を読み、規矩術を駆使し墨付け、鑿や鉋や鋸を使い刻む。

                                                                                                        

大工の基本でしょうが、それが出来る大工さんは確実に減ってきています。じゃあ、大工って?

 

考えさせられます。

 

少し前まで普通に行われてきた墨付け・刻み、は特殊な仕事となりつつある気がします。

 

なぜなら、それをやる人が確実に減ってきているからです。木造建築に関わる者としてこの現状を見て見ぬふりをしたらいけないとはずです。

 

現代の大工のあり方も必要です。プレカット工法も現在の建築業界の中では重要な役割を果たしています。ボード張などの乾式工法も現代に合っていると思います。でも、墨付け、刻みが出来る大工職人も、湿式工法で仕上げることが出来る左官職人もいるべきだと感じます。

 

大工がいなくなる=日本の住文化がなくなる。位の事だと思います。


では、今私たちに出来る事って。。。

今、私たちが出来る事、やらないといけない事。

それは次の世代の育成ではないのでしょうか。

今の60歳代前後の職人さんたちがいるうちに、その技術を20代30代の若い職人さんに受け継いでもらう。

私達がやらないと、今やらないとあと、10年たったら手遅れになりそうな気がします。

 

茅葺き職人のような特殊な職業になる前に、大工や左官の育成を行い、先代から受け継いだ技能を発揮する機会(現場)を出来るだけ増やして次につなげていく事が大事だと感じ始めました。

 

今年で第4年目となる大工育成事業「令和の大工棟梁検定」

長崎の福田支部長の舵取りの元全国で開催されます。未来の棟梁を目指す大工さんや学生さん、推進企業を通じて無料で参加可能です。

 

こういう検定会も必要ですし、普段からの育成も大切です。大工や左官に代表される様に本来一番身近にいるべき職人さん。特殊な職業になる前に次につなげないといけません。

 

全国古民家再生協会宮﨑第一支部
支部長  坂口 孝生